バリアフリー裁判に思うこと!

少し前にNEWSになったことなので、記載しようと思います。

記事は時事通信社さんのものをURLリンクしておきます。

住友不動産に賠償命令 バリアフリー不適合の住宅建設―東京地裁」2022.3.22記事

この裁判、まだ続いてくれないと地裁だけの判断では、今後の住宅業界のバリアフリーに対する考え方を大きく左右するものになるんじゃないかと思っています。

リノベーションの企画会社として、建築士として、この裁判の地裁が出した答えについて、少し考えたいと思います。

記事の内容を確認しただけなので、双方の内容を全て理解した訳ではないけど、今回の依頼者のオーダーについて、建築士としての回答としたら、「受諾拒否」になります。これは結果論ですけどね。

「全く段差が発生しない住宅を作ってください。」とのオーダーでも、「No!」です。
住宅もそうですが、建築物自体は人が作っているものなので、段差0なんてものは存在しないと思っています。

その点からすると、外れクジを引いたのが大手の不動産会社で良かったと思っているところです。

プラス、この結果の原因に請負元には無いのかと言えば、「そんなの簡単でしょ!」と思って営業した建築関係無資格の営業(たぶん建築士などの資格は無いと思う。)が設計者にどのように伝えたかの問題点、さらには、そこに介在する専門家からの意見聴取をしなかったんではないか?と思っているところです。

そもそもバリアフリー住宅に許容される段差は概ね20ミリ。2センチです。でも、これって実は危険な段差だったりもします。

ワタシの考え方は、バリアフリーで微妙な段差を作るなら、安全な判断できる高さがあった方が、バリアフリーだとも思っています。これは、ワタシの考え方なので、良いとは言えません。

次に、工夫次第で段差0の住宅を作ろうと思えば、出来ない事はないですが、全て完全オーダーメイドです。生活に多少の不便さを求める事になろうかと思います。

果たして、これがバリアフリーなのか?という事なんです。

バリアフリーって聞こえは良いです。住宅におけるコンセプトとしては「誰かの障壁(物理的障壁)の無い生活」って事になります。要するに段差解消などです。

だけど、これって誰かには不便なんですよね。

例えば今回の事例でいうと、車椅子生活者にとっては玄関框(かまち)の段差は障壁です。これの解消の為にスロープとかがあります。でも、お年寄りにとっては玄関框の段差は、靴を履いたりする時の座って履ける場所になります。だから、マンションの下足と別けるだけの框は意味がなかったりします。

これって、車椅子生活者にとっては、乗り越えられる範囲の段差でバリアフリーなんですが、靴を履くのに苦労するお年寄りの方にとっては障壁ですよね。

バリアフリーってそういうものなんです。

バリアフリーは「誰でも」じゃなく、「誰かの」って特定なんです。

ではでは、「誰でも」となると、ユニバーサルデザインです。「どのような人にも使いやすいデザイン」って事なんですが、住宅のユニバーサルデザインが考えついたら、多分ワタシ億万長者になれると思っています。

そんな住宅考えつかないからです。

実はこの内容を描いているのは、半分宣伝です!

ワタシは住宅のユニバーサルデザインが考えつきません!(断言!)だって、誰でも使いやすいってあり得ないから。
なので、リノベーション事業なんて事をしています。

そして、当社のコンセプトは「住まいを快適に!住まいに個性を!」です。

バリアフリーにも、ユニバーサルデザインにも逆行しているのかもしれませんが、室内(専有部って言い方をしましょう!)は、誰でもじゃなく「私が使いやすい!」「私に障壁がない!」それで良いんです!だって、それが生活しやすいから。

AさんとBさんが同じ家で生活をして、両方とも快適な家って、相当話し合わないと作れません。

売買でAさんからBさんへ引き渡すとき、「ここは良いけど、あそこは使い難い」って必ずあると思います。

そういうものを作り上げて行くのが建築と思っています。

家の中に「掘り込みスペース」を作りたい人もいます。これってわざと障壁を作ってるんです。

バリアフリーだけで考えると、そんな住宅を作るのはナンセンスですよね。

そういう意味で、掘り込みスペースをオーダーする人には「床に座りたい。だけど、腰が(足が)悪いから段差があれば座れるのに。」って人には、これがある意味バリアフリーなんです。

今回の裁判、「バリアフリー不適合」でこのまま結審すると、建築の世界(商品選び・予算・施工)のバランスが崩れます。

まずは、全てオーダーメイドにすると、予定価格では収まりません。

では、商品は既製品を使用すると、段差0なんて施工責任、大工さんや職人さんには責任負えません。

「商品が無いからだ!」となると、メーカーは作りますが、滅多に売れない商品の価格はとてもじゃないけど一般人が使える代物じゃない。

って事になり、誰も請け負わなくなりますし、設計者も責任取れないので、「拒否!」そうすると、日本の住宅事情は劣悪になるんでしょうね。

この記事を見て、とある人は「産婦人科(産科)」の現状見たいと。

産科の出産リスクで責任問われるなら、産科にはなりたくない!といって、産科医が少なくなる原因が2008年の大野病院事件と言われています。

個人の責任を問われたこの案件と、企業の責任を問われたバリアフリー裁判。

少し違えど、バリアフリーは中小・地場の工務店は請け負わないとなるかもしれません。

そうならない事を願うばかりですが。

因みに画像は、よく危険な段差として扱われる程度の段差です。(※写真ACより)